魔法、詠唱、それからオタク
この記事は熊本高専Advent Calender2017 10日目の記事です。私はオタクではないです。
5年なので研究に追われていて、実験のレポートも火曜日提出のものが2本あり、うち1本はまだ1文字も手を付けていないので、こんな記事を書いている余裕は本来まったくありません。先輩も後輩も書いてるから仕方ないね。
ところで、私は魔法が好きです。中でも、詠唱のある魔法が好きです。 作品として例を挙げると、「うらら迷路帖」「カードキャプターさくら」「Fate」「マギ」あたりです。 ふらいんぐうぃっちは詠唱のある魔法は少ないですが好きです。
ここで、詠唱とはなにか、ということに触れますが、個人的な好みとして、「呪文名のみを唱える」というのは詠唱には含まないものと考えています。 例としては、「ハリーポッター」「ソードアート・オンライン」「魔法少女まどか☆マギカ」あたりです。
無言で杖を振るとパッと効果が現れたり、「――ふっ!」みたいな発動も嫌いではないですが、例えばCCさくらの「闇の力を秘めし鍵よ、真の姿を~(以下略)」みたいな長々とした詠唱が好きでたまりません。
その魔法の本質というか、指向性というか、魔法自体の持つ意味を考える材料として、詠唱は重要な役割を持ちます。また、その作品世界での魔法の法則も見出すことができます。 今回は、うらら迷路帖を例に取り、詠唱から読み取ることのできる世界観や、作品世界における法則を考えていきます。
うらら迷路帖
この作品における魔法は占いであり、その詠唱を「祝詞」と呼びます。
この作品で繰り返し登場する上、使用者の成長や個性、世界の法則性を見出すことができる重要な占いとして、「狐狗狸占い」が存在します。 まずは、第1巻において本来の使用者(紺)が用いた祝詞を見てみます。
――奇々も怪々お尋ねします こっくりこっくりおいでませ もしもおいでになられたら どうか答えてくださいな
これ以降に用いられる狐狗狸占いの祝詞のベースとなるものです。この占いによって紺は千矢の「くろう」を予言します。
詠唱の後の行動によって占う内容が決定される種類の占いであると思われるので、この祝詞自体は「狐狗狸占い」において汎用的に用いられるものであると考えられます。
千矢たちが「古い扉が開くような」感覚を覚えているのは、「昔からそこにあるなにかしらの存在」を仄めかす描写であり、これは暗黙に「神様」を指し示すものです。
また、「いけないことをしているような」「くらくて深い秘密にふれてしまったような」という描写であったり、第2巻の泉中術での描写であったりで、この作品世界における神様の扱いを読み取ることができます。すなわち、神様とはうららに力を貸すものでありながら、しかし本来神との接触は「いけないこと」であり、神自身が接触を拒むものです。これは後に登場する「お狐様」の態度と矛盾するように思えますが、果たしてお狐様が神かどうかは作中では触れられていませんので、この時点ではまだなんとも言えないかと思います。
次に、第2巻において、千矢が用いた祝詞を見てみます。
――奇怪面妖御返しします こっくりこっくり恩返し 行きはよいよい帰りは恐い さばえさばえと帰りゃんせ!
さきほど言及したお狐様が登場し、紺に取り憑いた状態をもとに戻そうとして千矢が唱えたものです。
童謡「通りゃんせ」の歌詞を一部用いたものになっていることがわかります。
唱える直前に祝詞集(とみられる本)を参照していることから、過去にも狐憑きは複数回起こっているものと考えてよいでしょう。
最終的にお狐様は帰っていますが、描写としてはこの祝詞の効果が発揮されたわけではないと考えられます。
効果が発揮されなかった理由が、正規の発動方法と異なるからなのか、千矢の占力が足りないからなのかはわかりません。
さらに、またも第2巻において、紺が用いた祝詞を見てみます。
――神様どうかお尋ねします こっくりこっくりおいでませ 心無き願いを占いに もしも奪いはしないなら どうぞ繋いでくださいな
紺が泉中術の後、占力を奪われていないことを確かめるために唱えたものです。
泉中術は祝詞暗唱試験が終わった後の話ですので、それを前提として考える必要があります。
まず、紺とノノはある程度の数の初歩的な祝詞を暗唱できるという違いがあります。また、これまでの詠唱とは違い、紺たちは祝詞それ自体が厳密に定められたものではないことを知っています。
つまり読者からしてみれば、この祝詞が過去にその効果を発動したことがあるものかどうかは判断できないということです。
紺が自身で考案して実占した祝詞である可能性もあれば、そうではなく過去の事例からの定型文である可能性もあるわけですが、紺は実際に占ってみて確かめるという手段を、提案されるまで考えついていないように描かれています。過去の事例として確認を行う手段が確立されているならば、紺は言われるまでもなく考えつくだろうという推測のもと、この祝詞は紺が考案したものだと考えることにします。すると、ここまでの3つの狐狗狸占いの祝詞における共通点から、祝詞の構成方法についての仮説を立てることができます。
まずは3つの祝詞をもう一度振り返ってみましょう。
――奇々も怪々お尋ねします こっくりこっくりおいでませ もしもおいでになられたら どうか答えてくださいな
――奇怪面妖御返しします こっくりこっくり恩返し 行きはよいよい帰りは恐い さばえさばえと帰りゃんせ!
――神様どうかお尋ねします こっくりこっくりおいでませ 心無き願いを占いに もしも奪いはしないなら どうぞ繋いでくださいな
どうでしょうか、見えましたか? 狐狗狸占いの祝詞は、次の4つのフェーズに分割することができます。
- この占いで行うこと
- 狐狗狸を呼ぶのか、もしくは帰すのか
- 狐狗狸の行動の前提
- 狐狗狸への願い
ここまでで、狐狗狸占いの祝詞を構成する定性的な方法を仮定することができました。最後の祝詞で、この仮説を確かめてみましょう。
第3巻において、九番占試験攻略のため、紺がお狐様を降臨させるときに用いた祝詞です。
奇々も怪々お招きします こっくりこっくりおいでませ この身を差し出す御代わりに どうか応えてくださいな!
バッチリですね。「お招きします」「おいでませ」「この身を差し出す御代わりに」「応えてください」の4つで構成されていることがわかります。 この祝詞は紺が独自に考案したものであることは作中で明言されていますので、やはり先の仮定はある程度正しいものと考えてよいでしょう。
これで、うららになるための準備が1つ整いました。
最後に
私はオタクではないです。